2014年10月3日金曜日

ヘイトスピーチについて。

【 韓国に対するヘイトスピーチ 】

インターネット上では「言論の自由」を謳歌するかのように、何でも言っていいと考える人たちが少なくないようで、それがトラブルの原因になったり、偏った同じ考えの人たちがグループを作って反対の考えの人たちと対立したりしています。ネット上での「戦争」みたいなことも起きているわけです。

とりわけ日本と韓国の問題は、地理的に近すぎるせいもあって、「親日」「反日」「親韓」「嫌韓」などといった漢字ふた文字で、「どっちにつくのか?」「どっち側の人間か?」といったことをはっきりさせることが必要なことだと考える人が増えています。しかも「日本人なら韓国を憎むのが当然で義務だ!」というような考えの人がすごい勢いで増えているようで、書籍のベストセラーにもそうした「嫌韓本」が並ぶようになりました。今まで一般の日本人が知らなかった事実を知らせるという目的に限れば、それも大いに必要なことなんですが、「だから国を挙げて韓国を憎悪しよう!」というのはどうなんでしょう? 過去には実際に、「国を挙げてアメリカを憎悪しよう!」という政策が実行されたことがありますので、その過去にさかのぼってみましょうか。


【 大政翼賛会に始まる戦前のヘイトスピーチ 】

そもそも戦前の日本人は、イギリスやアメリカが大好きという人も多かったんですが、ソ連の謀略もあって対英米開戦ということになってしまった結果、「一億火の玉」になって「米英を撃滅」しなければならないという「大政翼賛会」が始まり、その「全体主義」が支配的となって、「鬼畜米英」などという目を覆いたくなるようなスローガンまで叫ばれるようになってしまいました。

大政翼賛会は、日本国内の政治を行なう上で意見の違う政党が互いに対立するようなことはなくしてしまった方がよいとする考え方に始まるもので、現代でいえば北朝鮮のような政治体制を目指したものだと思っておけばわかりやすいかもしれません。

そうして「一枚岩」となった日本の政治は、反対意見を言うことができなくなっていき、新聞、雑誌やラジオなどの報道機関に対しても、日本が戦争で勝たなければならないという目的が最優先されるようになり、それまでの自由な言論は厳しく管理し統制されました。

日本中に「戦意高揚」を叫ぶスローガンが溢れ、日本軍が不利な情報を流さないようにもしたために、国民は「日本がきっと勝つ」と信じて、無理な考えや無理な活動でも一丸となって受け入れてがんばることになったんですね。


【 憎悪による支配 】

もちろん本音としては、イギリス文化やアメリカ映画が好きだという人も多かったはずなのですが、それは「敵国」だということで、「好きだ」などとはとても言えない空気が日本を支配してしまいました。さらに、「お父さん、戦争へ行ったら敵をたくさんやっつけて来てね!」などというセリフを女の子にまで言わせて、それが「模範的な日本の子供」だという宣伝もされていました。戦時中の日本映画を見ると実際に出てきます。(成瀬巳喜男監督『まごころ』昭和14年)

それに反対すれば「非国民」との誹りを免れませんから、そういう時代、そういう時だと思って生きるしかなかったわけです。まだ未成年の息子たちまでお国のために命を捧げることが「正しい」とされて、アメリカを憎み、戦争最優先で生きました。

もちろんそれは、敵国であったアメリカでも似たようなもので、「ジャップを殺せ!」と叫んでも、褒められこそすれ、非難されることはなかったんでしょう。


【 憎悪の愚かさを知った日米国民 】

戦争が終わって、アメリカは戦勝国に、日本は敗戦国になりましたが、お互いに理解し合おう、助けあおうという気運がすぐに盛り上がったのは、戦時中に続いてきた「憎悪すること」の愚かさを、庶民レベルでも身にしみてよくわかっていたからです。

さて、日本が敗戦国となって69年。これはもう本当に長い年月が経ったものだと思いますが、殺せと互いに憎みあうことの愚かさを記憶している人も、年月とともに次第に少なくなってしまったのかもしれません。

戦時を経験していないからしょうがないのだといえばそれまでですが、隊列を組んで堂々と「韓国人を憎め!」とヘイトスピーチに繰り出す人たちが、インターネット上では喝采をもって歓迎されている様子を見ると、やはり私たちはまだ十分に歴史に学んではいないのだと思えてなりません。


【 憎悪が憎悪を煽る。そして地獄へ 】

憎悪を露わにすることは、相手の憎悪を煽ります。互いに憎悪を増幅しあった先にあるものは、不幸を超えたこの世の地獄です。

韓国の李明博大統領や朴槿恵大統領がその憎悪を日本に向けたことなど、韓国の側からの憎悪がそもそもの始まりだと思います。確かに感情的には韓国人によって憎悪を煽られているわけですから、それに対抗してこちらからも「韓国こそが嘘をついていて悪なのだ」と声高に非難することで溜飲を下げたいと思ってしまいます。でもそれは、家庭や親しい友人止まりにしておくべきことで、何十人、何百人という大きなグループを作って叫ぶようなことをしてしまえば、また戦前と同じ間違いを繰り返すことになります。また悲惨な戦争をするしかなくなるんです。


【 相互理解を求める姿勢が憎悪を生む 】

たとえ相手が一方的に悪いのだとしても、見せるべきは相手を「憎む姿勢」ではなくて、まず「理解する姿勢」です。

日本人は何かにつけて「相互理解」という言葉を好みます。でもこの「相互理解」、疑っておく必要がある言葉です。

「相互」という言葉には、相手からの理解が前提になります。相手がこちらを理解することを、相手側に求め、期待します。日ごろ『パーミストリー講座』でもお話ししているとおり、相手への希望や期待は、裏切られることで「怒り」へと変わります。つまり、「相互理解」という限りは、相手から裏切られて相手を憎悪する原因を自ら作ってしまうということです。

ですから、向かうべきは「相互理解」ではなく、少なくとも自分だけは相手を理解してやろうという姿勢です。それがこちらからの一方的なものになってもかまわないから、とにかく相手をとことん理解しようという姿勢が必要なんです。


【 自分からの理解を全てに優先させる 】

また、「相手の立場に立って考える」という言葉も私たちは好んで使いますが、それが簡単でないことは小学生にもわかります。本当に相手の立場に立つには、必死になって相手を理解しなければならないからです。その理解ができてはじめて、相手の立場に立つことができ、そこから本当の問題点を見つけることもできるようになります。

相手のことを十分に理解できた上ではじめて、相手の間違いを指摘することもできるようになるというわけです。そうではなく、不十分な理解で相手の間違いを指摘しても、相手は自分の方が正しく、こちらの指摘が間違っているとしか考えません。


【 民度の違いとは、憎悪に短絡するか、理解する努力に行くかの差にある 】

ヘイトスピーチに血道を上げれば、「相手にもっと自分のことを憎んでもらおう」と宣伝することにしかなりません。それでは相互の対立が深まるばかりで、自分の利益にも日本の国益にもならないどころか、自分や国の値打ちをおとしめることにしかならないんですね。

もし韓国の大統領が愚かな日本憎悪の言動を見せたというのだったら、それを「どう理解したらいいか?」「どんな裏の事情があるのか?」といったところにまず視点をもっていきたいものです。いきなり対立の当事者になるのではなく、まず「名探偵コナン」になるんです。そこから始めてこそ、本当に自分と自分たちの利益につながる指摘もできるようになるはずです。

これについては、個人と個人の問題でもまったく同じことがいえます。もし自分を憎んでいる人がいたら、どうしてそうなったかについて、とことん知ってみたいという「理解への意志と意欲」をもつことが、解決の第一歩です。


【 頭にきてしょうがないときは? 】

とはいっても、私たちはいたって感情的な生き物で、そういつもいつも冷静でいることはできませんし、自分が攻撃の対象にされているとなれば穏やかに考える余裕もなくなって普通です。

そんな時には、知らばっくれてあさっての方向に顔と意識を向ける努力をするとか、とにかくまず間に人を立てるとか、そういうところから始めるしかないのかもしれませんが、常に失ってならないのは「理解への意志と意欲」なんですね。


【 在日特権を許さない市民の会の功績 その1 】

「在日特権を許さない市民の会」(略称:在特会)の桜井誠会長という方は、書いた本がベストセラーになるなど、人を引きつける魅力をもった素晴らしい人だとは思います。桜井さんの果たしてきた功績というものも確かにあって、それはまず、認めないわけにはいかないでしょう。

まず、在日韓国朝鮮人に認められている「特権」というものが現実の日本に存在しているということを、日本人一般に知らせたという功績です。同じ外国人なのに、元日本人だった韓国朝鮮人には認められて、その他の外国人には認められないという「特権」があるんですね。韓国朝鮮人が本名を名乗らず、「通名」という、いわゆる偽名によって生活できてしまうことなど、どう考えてもおかしいということがいろいろあるようです。おかしなことは改めるというのが当たり前ですから、行政を担当する人たちにもその点に気づいてもらい、政治的に解決する必要があります。そのきっかけを在特会が作ったということなら、それは大きな功績になると思われます。


【 在日特権を許さない市民の会の功績 その2 】

もうひとつ、大きな功績だろうと思うのは、韓国に対して強い反感をもっている人たちの溜飲を下げたことです。李明博大統領や朴槿恵大統領が、日本人の憎悪を煽るような、とても一国の大統領とは思えない民度の低い言動を見せて、それに対して頭に来た日本人は決して少なくありません。

何しろ、韓国は「反日」でなければ国が成り立たないという、とても不幸な建国精神をもっていますから、そんな国が隣にあるというだけでも、私たち日本人は安心して暮らすことができません。

反日は大統領に限らないことで、日韓共同開催だった2002年サッカーワールドカップや、その他の様々なスポーツ大会での、民度の低い韓国人による反日的な「自己アピール」も目立ちました。もちろんそれが韓国人の全員の考えではないのですが、何しろ反日国家ですから、スポーツの場で偏った政治的主張をすることを、恥ずかしいとも思っていないわけです。

そのような反日韓国と反日韓国人に対する、日本人の日ごろの鬱憤を晴らしてくれたというのが、桜井会長率いる在特会の果たした大きな功績として認めないわけにはいきません。


【 それでも在特会がダメなわけ 】

それでも在特会は「ヘイトスピーチ」だと指摘されて嫌われてしまいます。なぜダメなのか、その理由は次の二つです。

 (1)憎悪(Hate)の存在が明確であること。
 (2)腹いせ(Spite)が言動の目的であること。

在特会はそれを隠そうともしていないようですが、その主張と行動のほとんど全てが、憎悪と腹いせ( Hate and spite )なんです。

「憎悪の対象を特定し、大衆にその憎悪を煽って団結させ、主張と行動ですっきりさせる」

このような方法が愚かであり、間違いであるということは、すでに上の【 憎悪による支配 】などで書いたとおり、その先には、不幸な地獄が待っているということです。それを歴史に学ばなければなりません。

少なくとも政治家や、こうした市民運動を先導する人たちは、大勢の人々の命運を握っているわけです。桜井会長には、到底そうした自覚があるとは思えません。


【 もうひとつ、わかりやすい例 】

 腹が立って心が壊れそう → すぐ相手を攻撃する → すっきりする

 疲れきって心が壊れそう → ヘロインを注射する → すっきりする

ヘロインを使ったことがないのであくまでも知識としての話が含まれますが、私たちは疲れたり、腹が立ったりしたときに、それをすぐにすっきりさせたいという衝動を覚えます。

それをすぐにすっきりさせる方法が、麻薬であったり、相手への攻撃であったりします。ところが、そのような方法ですっきりしたと思っても、それは絶対に、根本的な解決にはなりません。